Pao Family 歌集
銀色の朝
もうすぐやってくるよ君をさらう電車が
君は後向きで 朝焼けに煙る街を見つめている
「今度こそは 幸せになるわ」
黒髪をわざと前に流して
君の肩にかけた僕の指先が
悴んでいるのがわかる
硝子隔てて君は中 俯いた君の目が哀しい
なぞった二人の手の温もり 冷たい電車の窓
雪の降らないこの地方に 今年は雪が積もった
窓辺に君が置いていった
シクラメンも花をつけた
何もなくなったこの部屋に
あでやかに写る白い花
今度入る人はこの花を 愛してくれるだろうか
君が最後まで離さなかった
ワーグナーのローエングリン
悲しいまでに美しい旋律を 僕に残した
「今度こそは 幸せになるわ」
黒髪をわざと前に流して
君の肩にかけた僕の指先が
悴んでいるのがわかる
硝子隔てて君は中 俯いた君の目が哀しい
なぞった二人の手の温もり 冷たい電車の窓
words & music
海津 雅洋
12月
あれから1年が もう過ぎようとしている
クリスマスソングの響く 町並みを一緒に歩いた
僕のたった一つの 気短かが
二人を結び付けていた糸を 切ってしまった
煙草の煙の中に 君の姿を見つけたら
何にも言わずに そっと目を閉じていましょう
あの日 別れた二人には 何の思い出も
悲しくて 寂しくて 切なくて 破いた二人の写真
流れた時間の中で 僕は前が見えなくて
雪降る北の町に 君は消えて行った
頬なぐる 木枯らしの中で 立ちつくす僕だった
一人で歩く雪道は あまりに寂しい
words & music
海津 雅洋
おばあちゃん
幼い頃 おばあちゃんのひざの上 昔話あれこれとやさしい子守歌
大きな柏餅 いっぱいおばあちゃん作ってくれた
折り紙のたくさん兜を 僕にかぶせてくれたね
12色のクレヨンまだ持っているよ 還暦のお祝いに似顔絵をあげるね
きのう僕の ポストに手紙が着いたよ 元気そうな筆運び安心したよ
あまり無理はしないで 煙草は吸いすぎるな心配だから
都の娘っ子に たぶらかされるなや 気を付けとけや
大丈夫だよおばあちゃん 心配しないで
僕の嫁はおばあちゃんに 見つけてもらうから
words 海津 雅洋
music 松島 和己
感傷的(センチメンタル)
君はもう あの町には いるはずもない
新緑に 彩られた城跡の町に もう一度だけ 思い出をたぐり
笑顔のままの 君の写真を抱いて 北国へ走る列車は
いつも人恋しくて もうもどれない 君の笑顔が 遠くの明かり
あの日の空は 雪が舞い降り 君の言葉が風にとけた
川沿いの喫茶店は 君の好きなモカの香り
テーブルの上で 遊ぶ細い指先 かけたばかりのパーマネントウェーブ
どうして君の甘えを 許してあげなかったの 抱きしめても
あの日の涙をつぐないきれない 人混みを避けて 迷い込んだ神社で
引いたみくじは 神木に括って 失せものいずることなく
今はそっと目を閉じて もう忘れよう
少しだけ 少しだけ名残を残して。
words & music
海津 雅洋
霧の中に消えた花嫁
その日は 朝から霧が立ちこめ ヘッドライトは薄明かり
高速道路を駆け抜けて行く おまえの住む町へ
まるであの日の おまえの言葉が 氷のように
突き刺さった 砕け散った二人の愛は
このままいたら二人とも 駄目になりそうで
突然の終止符は おまえの名前が変わること
おまえのしらけた 笑顔なんか見たくもなくて
午前零時の 電話はウソと 決めつけて走る
やがて 二人は朝日に染まり 銀色のベール
助手席の上に 白い陰をおとす おまえの素顔
静寂の時を 引き裂くように 教会の鐘がなる
扉を開けて 出てきたおまえは 青ざめた涙
白いドレスに 身を包んで 胸には赤いカトレア
あの夜の燃え尽きたおまえには 黒いバラがよく似合う
おまえの肩を抱いて したり顔で笑う うまくやりなよと
うらはらな思いと 霧の中に消えていく花嫁
words 海津 雅洋
music 松島 和己
キャバレーソング(キャバソン)
チャンチキ チャンチキ ドキドキ ドキドキ ハッスル ハッスル 突撃 突撃
こんな時には、馬鹿になりきり ホイ ホイ ホイ ホイ ホイ ホイ
お触り お触り イレポン ダシポン カッポレ カッポレ
ジュリンコ ジュリンコ 揺られて 揉まれて 弄って 弄られ
ここは極楽男の天下 ハッスル ハッスル ホイ ホイ ホイ ホイ
チャンチキ チャンチキ ドキドキ ドキドキ
ハッスル ハッスル 突撃 突撃
学生さんも お医者さんも 校長さんも お巡りさんも
みんな一緒に 突撃 突撃 ハッスル ハッスル
こんな時には 馬鹿に なりきり お堅いことは 言いっこなしで
変身 変身 変身 変身 ホイ ホイ ホイ ホイ
チャンチキ チャンチキ ドキドキ ドキドキ
ハッスル ハッスル 突撃 突撃
PM ロンドン メキシコ ラブメイト ホイ ホイ ホイ ホイ
words 海津 雅洋
music 松島 和己
四度目の春
さよなら君に すてきな人だった さよなら君に 口づけしたときも
君は子鹿のように震えていたことも
4度目の春にあなたは 結い上げた長い髪も 風になびいた季節の名残を漂わす
さよなら 君と 描いた夢と さよなら ありがとう 思い出をありがとう
出会いはいつも 笑顔があって 別れはいつも なみだをいざなう
唇で君がこさえた笑顔も 小さな肩を震わせながら いつか君と約束したね
海の見える町へ行こうと 君の手を引いて走ってみたかった
さようなら さようなら なんて悲しい響きだろう
さようなら さようなら 思い出をありがとう
さようなら さようなら なんて悲しい響きだろう
さようなら さようなら ありがとう 思い出をありがとう
さようなら さようなら なんて悲しい響きだろう
さようなら さようなら 思い出をありがとう
words & music
海津 雅洋
急行赤城一号
赤城おろしは 冷たくて 二人の心に吹き抜ける
遠く離れて 暮らすことは 行けないことだと知っていた
弁天通りの バラのコーヒー とてもおいしいわと 言っていたね
今度は二人で 赤城にドライブ 行こうねなんて 言っていたのに
上野発赤城1号で あなたが くるようで
春のぬくもりに とまどいながら けだるい日が続く
赤城おろしは 冷たくて 二人の心に突きぬける
君の手編みの 水色のセーター 季節が残した忘れ物
前橋駅前の 白樺の紅茶 とてもおいしいわと 言っていたね
今度は二人で 榛名にドライブ 行こうねなんて 言っていたのに
前橋発赤城3号で あなたが 来るようで
春のぬくもりに とまどいながら けだるい日が続く
ジャズ喫茶店の 気まぐれトムは とてもすてきねと 言っていたのね
今度は二人で 妙義にドライブ 行こうねなんて 言っていたのに
上野発赤城1号で あなたが 来るようで
春のぬくもりに とまどいながら けだるい日が続く
words & music
Sutou Gantyan
帰らなくちゃ
たまには いいでしょう お酒ぐらい
あのひといつも 午前様 一人でいるには
夜は長すぎて 煙草もすこしは 吸えるのよ
いいわね 男の人って いつも気ままで
あなた 女のひと 愛したことある
いやだわ私 酔ったみたいね
あの人きっと 怒ってるわよ
帰らなくちゃ 帰らなくちゃ あのひと待っているから
ごめんなさい ごめんなさい もう帰らなくちゃ
そんなに やさしい目をしないで
お酒の味が 分からないから このごろ わたし
いつも一人 昔のように 素直なままで
帰らなくちゃ 帰らなくちゃ あのひとまっているから
ごめんなさい ごめんなさい もう帰らなくちゃ
words 海津 雅洋
music 松島 和己